私がハワイに留学して一番印象的だったのは、ハワイの安らかな空気と人の暮らしの豊かさです。私は日本にいたとき、日本の時間に対する厳しさや、仕事などに追われてあくせくと働く人々の余裕のなさに、とても窮屈な感覚を覚えていました(私が京都の中心部に住んでいるからかもしれません)。そして、それを最も体現していたのが自分であり、最もその時に余裕がなかったのが自分だったのです。
ハワイに行くと、せかせかしている人は殆どいませんでした。平日のビーチでも人々が余暇を楽しみ、ゆったりとした足取りで歩いています。基本的に車よりも歩行者が優先なので、車と交差しそうになっても必ず止まってくれます。人々に余裕があるからか、どこへ行っても日本人よりフレンドリーで気さくな人が多い印象でした。
そして、これは「ハワイの人だから」という理由ではないかもしれませんが、私のホストファミリーであった夫妻は、お互いにお互いを尊重しあい、助け合って生活しているような感覚でした。夫妻はもうそんなに若くはありませんでしたが、傍から見ていても、お互いを愛していて、思いやりや優しさをもって接していることが伝わりました。日本ではまだ父方が強く、夫は家事などを全て奥さんに任せっきりという家庭も多い気がしますが、私のホストファザーは早く帰っていた日には、ホストマザーの料理を自然と手伝っていました。また、お互いに笑顔も多く自然なコミュニケーションを取っていたことから、とても対等で尊重しあっている印象を受けました。とても穏やかで素敵なご家族だなと、私も優しい気持ちになれたのでした。
そして、最もハワイの時間感覚の寛容さを感じたのが、私が暮らしていた「ハワイカイ」からダウンタウンへ行く途中のバスの中で起こった出来事でした。このバスは1時間に1本しか来ないのですが、私が乗るときには既に40分ほど遅れていました。そのあと出発したのですが、道が混んでおり、1本次のバスが後ろに追いついてしまっていました。そして運転手は、何食わぬ顔で「みんな後ろのバスに乗って」と言い出したのです。流石に怒っているおばさんもいたのですが、多くの人はさほど気にも留めていないようでした。
日本では40分~1時間の遅れはまずあり得ないことですし、みんな忙しすぎて電車内で騒ぎ立ててもおかしくない出来事です(その後、これのせいで映画を見過ごしたので、私からしたら何とも言えない気持ちになりましたが笑)。ですが、この時ほとんどの人が平静に後ろのバスに移動していたのは、やはり時間に余裕があり、時間に寛容な国であるからにちがいありません。
このように、ハワイでは人々が日本よりも心にゆとりをもって生活しているような印象を受けました。また、ハワイのビーチや眺めの良いホストファミリーの自宅で、時間に追われずゆっくりとした生活を送れたことはこの上なく豊かな時間であり、幸せな時間でした。普段、色んなものに追われている生活を見つめなおし、人生の豊かさについて考え直した瞬間でもありました。「生きているだけでいい」そう思えたのもこの時だったかもしれません。